【読書感想備忘録】ぼくは明日、昨日のきみとデートする/七月隆文
ぼくは明日、昨日のきみとデートする/七月隆文
読了。
少し前に文庫本を購入したものの、ずっと読めていなかったのですが、先日iPhoneを水没させ、暇ができたのでついに手を付けることが出来ました。普段いかにスマホに時間を取られているかってことを実感しています。小説はいいぞ。
※ネタバレありの感想です。念のため。
話題作ではあったのですが、内容を全く知らずに読み始めました。タイトル的になんとなくSFかな、という程度。もともとSFは好きなので読んでみようかな、という程度。
あっ、カスヤナガトさんによるカバーイラストに一目惚れしたのも理由です。ポップで、かつ繊細なイラストは、作品の雰囲気にぴったりだなという印象。
難しい表現はなく、けれども情景描写や感情表現はすごく豊かだなぁ、というのが全体としての感想です。ストーリー展開を妨げるような無駄な描写はないけれど、しっかりと作品の雰囲気や情緒は感じ取れるような、そんな印象でした。
京都に詳しかったらもっと楽しく読めたのかなぁ、と。
それから、ストーリーの感想としては「そう来るか」と。
ストーリー序盤、散りばめられていたヒントから「あーはいはい、タイムスリップものね」と斜に構えながら読み進めていました。過去だか未来だかからタイムスリップして来てるんでしょ、と。
しかしこれがまんまとミスリードに引っかかっていたわけです。修行が足りんなぁ。
単なるタイムスリップものであれば、告白のタイミングでスッと理解できてしまうのですが、時間の流れる方向が逆のパラレルワールド????は????という感じで、なかなか呑み込めず、主人公と同じように混乱に陥りました。
なんだよ、トンデモ設定のSFかよ、なんて始めは思っていたものの、読めば読むほど切ない純愛物語で。
幸せな日々を過ごしてきたと思っていた相手は、これまでの思い出を共有していない。それってすごく切なくて寂しいなぁ、と。
高寿はもちろんなんですが、やっぱり、昨日より今日、今日より明日と、段々距離が離れていってしまう日々を過ごさなきゃいけない愛美の境遇の切なさは計り知れない。
それでも大切な思い出を守るために、事細かにメモに従って演技をする愛美のけなげさとか、そんな愛美の苦しみに気付けなかった高寿の悔しさとか。
今が一番幸せだってわかった上で未来を迎える気持ちってすごく苦しいんだろうなぁ、とか。
それでもお互いを大切に思う気持ちだけは繋がっていて、共有できているって素敵だなぁとか。
とても心を動かされる作品でした。
特にエピローグが本当に切なくて好きです。
機会があれば七月さんの他の作品も読んでみたいなあと思いました。